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睡眠不足が肥満(体重増加)につながるメカニズム

経験上、十分な睡眠を取らないと、脂っこいピザを食べてしまったり、アイスクリームのおかわりをしてしまったりする可能性が高くなっていることを知っているかもしれません。

そうです。睡眠不足は、科学的には体重増加と関係しているのです。 

健康的な体重を維持している人も、痩せたいと思っている人も、睡眠の重要性を無視していると、想像以上に減量の妨げとなってしまいます。

睡眠と体重減少(または体重増加)がどのように関係しているのか、また、どのように睡眠を減量計画に不可欠な要素として考慮すべきなのかを見てみましょう。

以下が問題の核心となります。

・睡眠が体重管理に役立つかどうかを確認するためには、どのくらいの睡眠が必要なのでしょうか?

・定期的に十分な睡眠を取らないとどうなるのか?

    では探っていきましょう。

     

    1. 睡眠不足と体重増加との生化学的関連性

    アメリカの睡眠に関する研究団体によると、夜更かし、毎日の寝坊、午後8時以降の食事は、体重増加の危険因子のようです。これは、睡眠不足がエネルギーレベルを低下させるという事実に起因する部分もあります。 しかし、睡眠不足はまた、身体の化学反応を変化させます。すなわち、神経伝達物質、ホルモン、および脳と身体がコミュニケーションに使用するその他の化学物質間の相互作用に影響を与えます。

    毎晩どれだけ寝るかが、体重と代謝の重要な調節因子であることが科学的に示されています。 

    それは、睡眠が、食欲のコントロールに関わるレプチンとグレリンという2つの重要なホルモンレベルをコントロールしているからです。

    レプチンとグレリンは、体重減少と体重増加に重要な役割を果たす2つの分子です。 

    それぞれについて詳しく見ていきましょう。

    1-1. レプチンとは

    レプチンというホルモンは、食事をストップするよう脳に指示するホルモンです。なので、レプチン系は体重の調節に関与していると言えます。主に体内の脂肪細胞で産生されますが、胃でも少量生産されます。 

    レプチンはシグナル伝達分子であり、視床下部の受容体によって感知され、脳の領域である視床下部は、エネルギー恒常性を含む日常生活機能の多くの側面でバランスを維持しています。 

    エネルギーの恒常性とは、空腹感と満腹感をコントロールすることで、エネルギーの必要量のバランスをとる体の自然な能力のことを指します。 

    レプチンは長期的にエネルギーバランスを調節し、食物摂取を抑制して体重減少を引き起こします。

    ある科学者によって、遺伝的に肥満のマウスはレプチン遺伝子に変異があり、それが体内でレプチン系に適切な成分を作るのを妨げると判明しました。

    レプチンの身体への作用としては、空腹感の低下、食物消費量の減少、エネルギー消費量の増加(例:体温の上昇、酸素消費量の増加、脂肪細胞の減少)などが挙げられます。 

    しかし、レプチンがどのようにしてこれらの作用を代謝に及ぼすのかは不明のままです。

    1-2. グレリンとは

    グレリンはお腹を空かせるホルモンで、空腹感を調整します。胃、脳などで少量ずつ産生・放出される重要なホルモンです。

    グレリンはペプチドであり、アミノ酸の短鎖であることを意味します。 

    グレリンもレプチンと同様にエネルギーの恒常性維持に関与しますが、その作用はレプチンとは対照的です。
    レプチンが満腹感を促進するのに対し、グレリンの主な働きは空腹感を調節することであり、空腹感を促進することになります。 

    具体的には、グレリンは脳の視床下部の摂食中枢に作用して空腹感を増大させ、食物を求める行動を促進します。
    グレリンを注射された人間は、多くの空腹感を感じると報告されています。 

    グレリンのレベルは、絶食後に上昇します。これは、グレリンが空腹感と食物を求める行動を促進することにより、体重増加に直接的な役割を果たしていることを示しています。 グレリンのレベルの上昇は、肥満においても重要な役割を果たす可能性があります。

    レプチンとグレリンの両方がエネルギー恒常性の調節に関与しています。体重減少と体重増加に役割を果たしているのです。 

    つまり、レプチンは満腹感を調節するのに役立ち、グレリンは空腹感を促進します。

    これらのホルモンシステムが遺伝、睡眠、ストレス因子、またはその他の要因によって乱れると、グレリンとレプチンのレベルが乱れ、体重減少や体重増加を引き起こす可能性があります。 

    体内でグレリンが過剰に分泌され、レプチンが不足すると、体内の空腹感と満腹感のメカニズムが乱れ、空腹感の上昇と、その結果として体重増加につながります。

     

    2. レプチン・グレリン・睡眠の関係性

    過去20年の間に、科学者たちはレプチンとグレリンという ホルモンについて、それらがどのようにエネルギーバランスや睡眠と関連しているかについて、多くのことを研究してきました。 

    具体的には、睡眠が体内のレプチンとグレリンのレベルを変化させることで代謝に影響を与えるという考えを支持する研究が数多く行われています。

    この研究では、睡眠が減少するとレプチンのレベルが低下し、グレリンのレベルが上昇することが示されています。

    睡眠不足に関連する生化学的変化には、インスリン抵抗性、カロリー消費量の増加、炎症の増加、または身体活動の低下(例えば、日中の眠気による)などがありますが、これらが組み合わさり、より大きな変化を引き起こしている可能性があります。

    実際、科学的エビデンスは毎晩の睡眠時間と肥満との間の強い関連を支持しています。さらに、睡眠不足は、肥満度指数またはBMIの上昇とも関連しています。

    604,000人以上を対象とした18件の研究の分析で結果では、毎晩の睡眠時間が5時間未満の人では、睡眠時間が1時間増えるごとにBMIが0.35kg/m2減少することが示されました。

    さらに、1ヵ月以上継続している不眠症と定義されている慢性不眠症は、肥満と関連しており、体重増加の予測因子となっています。現在、科学者たちは、慢性的な不眠症が、グレリンの有意な減少、対応する第2期およびレム睡眠の減少、第1期睡眠に費やされる時間の増加、そして、睡眠時間の減少および全体的な睡眠効率の低下と関連していることを調べました。

    また、 睡眠不足の人は、分子メカニズムだけでなく、ストレスを感じながら食事をしたり、カフェイン入りのコーヒーやエナジードリンクに頼ったりすることもあります。

    最近の研究では、睡眠が腸内細菌を変化させることも示唆しており、それが食欲を促進することもあります。

    残念ながら体重増加によって、睡眠不足が持続して拡大し、睡眠の質が低下するという下降スパイラルに陥ってしまう可能性があります。

    体重増加は睡眠時無呼吸症候群のリスクを高める可能性があります。喉の部分に脂肪が蓄積することにつながり、喉の奥に追加された軟部組織は、睡眠中の呼吸通路を閉塞させ、睡眠時無呼吸症候群(一晩中呼吸が停止したり始まったりすることで特徴づけられる睡眠障害)を引き起こす可能性があるのです。

    ここまで睡眠の重要性について、体重減少の基礎となる分子メカニズムと、より広範な環境要因の両面から説明してきましたが、次では、十分な睡眠が体重減少を促進する具体的な方法について説明していきましょう。

     

    3. 睡眠不足は、食事においても意思決定を誤る原因!?

    睡眠不足は脳の前頭葉の活性化を低下させます。 

    睡眠不足が意思決定に影響を与えることはよく知られていることを考えれば、これは当然のことであり、実際、運転中の睡眠不足は飲酒運転と同じくらい危険であることが示されています。 

    18時間連続で起きている人は、血中アルコール濃度が0.05の人と同じような運転になります。その人が24時間起きていた場合、その人の運転は血中アルコール濃度が0.1の人のようになり、これは飲酒運転をしているのと同等です。

    疲れているときは、理性を捨てて高炭水化物、高脂肪、高カロリーの食品を選ぶ傾向が強いです。 これは、睡眠不足のときに脳の報酬中枢が食物によってより刺激されるという事実に一部起因しています。

    つまり、睡眠不足の日の夜は、ジャンクフードを「断つ」ことが難しくなる可能性があります。

    研究によると、睡眠時間が通常の3分の2しかない人は、1日に約600Kcalの余分に摂取していることがわかりました。余分なカロリーは時間の経過とともに加算され、毎週約500gの体重増加につながる可能性があります。 

    シカゴ大学の研究者が実施した研究では、睡眠不足の参加者は、クッキー、キャンディー、チップスなどの非常に口当たりの良い、ご褒美のようなスナック菓子を拒否できないことがわかりました。参加者は、ジャンクフードを提供されるわずか数時間前に食事をした後でも、そのようなスナック菓子を断ることができませんでした。 

    この効果は、間食が体重増加と関連している午後の終わりと夕方の早い時間帯に最も高くなりました。ジャンクフードを食べることを控えることができない原因は、食べることから得られる満足感に関連している化合物の2-AGという化学信号でした。 睡眠不足の時、2-AGは上昇し、そのレベルは睡眠中に最も低くなります。 

    したがって、睡眠不足の研究参加者では、2-AGの高濃度が、キャンディ、クッキー、チップスなどの食べ物を好むメカニズムを表していました。 このような報酬を求める傾向は、快楽食として知られています。 

    したがって、睡眠遮断に関連した快楽食は、体重増加の重要な原因です。

     

    4. 睡眠不足による代謝率の低下及びインスリン抵抗性の誘発

    科学者たちは、睡眠不足が新陳代謝に悪影響を与え、生活のストレス要因になることを発見しました。 具体的には、睡眠負債の発生は、炭水化物代謝だけでなく、ホルモン機能にも悪影響を及ぼす可能性があります。一晩の睡眠不足でも急性のインスリン抵抗性を引き起こします。

    睡眠不足は、ストレスホルモンのレベルを上昇させ、体の細胞をインスリン抵抗性に陥らせる原因にもなります。 研究によると、たった一晩の睡眠不足で、高脂肪食を半年間食べたのと同等のインスリン抵抗性を引き起こす可能性があることが示されています。

    睡眠不足の人は、ストレスホルモンであるコルチゾールの濃度も上昇します。これらの影響は、通常の老化過程で観察されるものと類似しています。そのため、睡眠不足が加齢に伴う慢性疾患をより重症化させる可能性があります。

    幸いなことに、睡眠不足に起因するコルチゾールレベルの上昇とインスリン抵抗性は、睡眠の負債を補えば、改善することができます。 しかし、コルチゾールレベルが高すぎる状態が長く続くと、体重増加、高血圧を引き起こし、睡眠にさらに影響を与え、気分に影響を与え、エネルギーレベルを低下させ、睡眠不足の人を糖尿病のリスクにさらす可能性があります。

     

    5. 睡眠不足が原因の運動不足

    睡眠不足は日中の眠気の原因となり、運動へのモチベーションを低下させてしまう可能性があります。

    ジムに行くエネルギーがある人でも、睡眠不足は不注意や疲れが原因で適切なフォームを維持できず、ワークアウト関連の怪我のリスクを高める可能性があります。 

    実際、専門家は睡眠不足の場合はワークアウトをしないことを推奨しています。 

    これもジムに行く前に必ず睡眠を取るようにすべき理由の1つです。

     

    6. 睡眠不足による腸内の善玉菌量の減少

    スウェーデンとドイツの科学者が行った2016年の研究では、睡眠不足が腸内に住む微生物、腸内マイクロバイオームに影響を与える可能性があることがわかりました。 

    睡眠不足が続いた2晩の後、参加者は有益な腸内細菌の有意な減少を示しました。しかし、これは肥満と2型糖尿病の両方に関連している現象です。 また、上述したように、参加者はインスリン抵抗性を発症しました。

    新しい研究では、腸内細菌が人の食欲を形成し、様々な食物に対する嗜好に影響を与えている可能性が示唆されています。 私たちの腸は、レプチンやグレリンに似たホルモンを産生しており、これが脳に食事の開始や停止の信号を送っています。N-アシル-ホスファチジルエタノールアミンと呼ばれる特定の分子は、食後に小腸にある腸内細菌によって産生されます。これらの分子は、強力な食欲抑制剤として知られる脂肪化合物であるN-アシルエタノールアミン(NAE)に速やかに変換されます。

    睡眠不足は健康な腸内細菌叢を維持する体の能力に影響を与えます。 
    睡眠不足は、空腹感や満腹感のシグナル伝達を変える腸内細菌の増殖を促進することが実証されており、睡眠不足による体重増加を促進するもう一つのメカニズムとして機能する可能性があります。

     

    7. 最後に:睡眠と体重増加

    睡眠と減量の関連性を理解することは、減量を目指す人にとって不可欠です。 

    睡眠不足は健康に多くの連鎖的な影響を及ぼし、体重増加を引き起こす可能性があります。 というのも、空腹を促すグレリンというホルモンのレベルを上昇させ、インスリン抵抗性を引き起こしたり、安静時の代謝率を低下させたりするからです。 さらに、研究によると、睡眠不足の人は、一般の人よりも平均的に多くのカロリーを摂取してしまう傾向があります。

    また、睡眠不足は疲労感や運動意欲の低下を招き、運動中のケガのリスクを高めます。したがって、睡眠は健康的な体重減少を管理するために不可欠です。(食事と運動を補完するものとして)

    質の高い睡眠の重要性を無視して、減量の目標を達成することは、減量の努力を完全に無意味にする可能性があります。

     

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