不眠症とは、入眠や睡眠の維持、早朝の覚醒に関する障害のことを指します。睡眠の質が悪くなると、日中の激しい眠気や、集中力低下などの問題が発生します。
不眠症には複数のタイプがあります。眠りにつくまでに30分以上かかることや、睡眠中何度も目が覚め、一晩の睡眠時間が6時間未満になることもあります。
不眠症は、生物学的、心理学的、身体的、医学的、環境的要因の相互作用の結果、発症します。
1. 不眠症の影響
通常の睡眠ができている人と比較して、不眠症の人は以下の影響があります。
・うつ病や不安
・簡単に目が覚める
・眠りにつくまでの時間が長くなる
・日によって睡眠の質が大きく変わる
・脳波(EEG)の活動が大きい
最適な睡眠時間は7~9時間です。睡眠不足は自動車事故の原因としてよく挙げられます。
不眠症に関連する市場として、医療費が1.2兆円、サプリメントなどの睡眠促進剤が2000億円と推定されています。
2. 不眠症の種類
不眠症には複数の種類があります。
2-1. 初期不眠症
初期不眠症とは、睡眠サイクルの初期で眠りにつくことができない状態と定義されています。テストや面接などの特別なイベントの前日に、遅くまで起きている場合、さらに問題が生じてしまいます。
2-2. 中期不眠症
中期不眠症とは、深い眠りにつくことが困難な状態のことです。健康的な人でも睡眠サイクルの中で目が覚めることはありますが、覚醒の期間が長く続き、睡眠への警戒心が強くなり始めると、睡眠に乱れが出ることがあります。この症状には、膀胱の不安定性、疼痛症候群、医学的疾患、うつ病などが関連します。
2-3. 末期不眠症
末端性不眠症とは、意図した時間よりも早く、または十分な休息が得られる前に目が覚めてしまうことを指します。うつ病や不安が一般的な原因です。
2-4. 睡眠時随伴症(パラソムニア)
これは悪夢、睡眠恐怖症、夢遊病などの睡眠中の異常な行動を指します。
2-5. 睡眠異常
これは睡眠の異常を意味します。例としては、原発性不眠症、睡眠時無呼吸症候群、概日リズム睡眠障害などがあります。
2-6. オルソソムニア
オルソソムニアは、睡眠トラッカーによって睡眠の質の悪さを知ることで、睡眠を意識しすぎることで引き起こされる不眠症です。
3. 不眠症の診断方法
主観による睡眠の質の測定項目には、睡眠の開始、睡眠を維持する能力、睡眠の深さ、夢、睡眠後の起床状態、睡眠が日常生活に与える影響、睡眠量、睡眠満足度などがあります。
睡眠の質スコア(SQS)は6つのドメインで構成され、睡眠の質を主観的に測定する方法です。
・日中の症状
・睡眠後の回復レベル
・睡眠開始時の問題
・睡眠維持の問題
・起床時の問題
・睡眠満足度
不眠症の医学的定義は、睡眠の量または質に対する不満であり、以下の症状の1つまたは複数に関連しています。
・入眠困難
・睡眠を維持することが困難で、頻繁に目が覚めるか、または目が覚めた後に睡眠に戻れない問題
・睡眠に戻れない早朝の目覚め
・慢性不眠症(これらの症状が1ヶ月以上続く場合)
その他の基準には、社会生活や仕事など、生活へ苦痛や障害、不眠症と関連した他の問題が存在などが含まれます。 不安障害や慢性疼痛などの精神疾患や医学的状態があわせて存在している可能性もあります。
4. 不眠症の検査方法
睡眠関連の障害を診断するために使用される検査方法を紹介します。
・睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合など、睡眠障害の可能性や重症度を特定するために、酸素量の検査は、治療の方針策定に役立ちます。
・睡眠センターで行われる睡眠ポリソムノグラフィーは、脳波を記録して、睡眠中の体の動き、血液中の酸素濃度、心拍数、呼吸、目や足の動きを追跡します。
・静かな環境で日中にどれだけ早く眠りにつくかを測定する睡眠潜時反復検査(MSLT)。
・アクチグラフィーは、小型の装置を使用して、日中の動きを継続的に測定する方法です。睡眠パターンや概日リズムを記録するのに役立ちます。
・致死的家族性不眠症(FFI)などの睡眠障害が疑われる場合の遺伝子検査。
・FFIの脳画像検査。
5. 不眠症に効く認知行動療法
認知行動療法(CBT)は、不眠症の患者にとって効果的な治療法です。目を覚まし続けたり、眠りを困難にするネガティブな思考や心配事をコントロールし、軽減することができます。CBTは以下のように構成されます。
・睡眠習慣に関する教育
・リラクゼーション療法
・刺激制御療法
・睡眠と覚醒時間の管理
CBTは75-80%の不眠症患者の睡眠を改善します。CBTを受けた患者の最大90%では睡眠薬の使用が少なくなります。CBTの問題点は、時間がかかることと、心理学者のような訓練を受けた専門家が必要なことです。
6. 不眠症に効く睡眠薬
不眠症を治療するために開発された薬はいくつかありますが、いずれも2週間未満の短期間の使用を目的とした臨床試験しか行われていません。
現在、1ヶ月以上続く慢性不眠症の治療を目的とした不眠症治療薬は存在しません。
ここでは、処方される睡眠薬の主な種類と作用について説明します。
以下は、不眠症のタイプ毎に一般的に処方される睡眠薬のリストです。
・睡眠導入型:ザレプロン、トリアゾラム、ラメルテオン
・睡眠維持型:ドキセピン、スボルレキサント
・両型 :エスゾピクロン、ゾルピデム、テマゼパム
7. 不眠症の原因となる薬
以下に、睡眠を妨げることが知られている薬のリストを示します。
・β遮断薬(しばしば高血圧に使用)
・クロニジン
・テオフィリン
・特定の抗うつ剤
・市販のものや処方されている鎮痛剤
・覚せい剤
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