合成CBDには大きく分けて二種類あると言われています。 一つ目が化学合成を利用した方法、二つ目が生物学的技術を利用した方法です。今回はこれらによる主なCBDの製造方法について取り上げて、比較してみたいと思います。 1. 一般的なCBDの化学合成経路 アダムスらが1940年に(-)-CBDの分子構造を解明して以来、CBDに対するさまざまな合成戦略が報告されています。 下図のように、CBDは構造的に2つの主要部位、すなわちリモネン部位とオリベトール部位で構成されています(下図)。 ※化学構造において、骨格はC(炭素)であり、基本的にCという表記は省略します。また、骨格に結合したH(水素)も省略します。ただし、状況に応じて、CやHを表記することもあります。 合成戦略ではリモネン部位とオリベトール部位をつなげるという手法をとることが多いです。化学合成技術を用いる場合、これが最も単純な方法だからです。 現在では最も一般的となった(-)-CBDの化学合成経路は1967年にPetrzilkaらによって報告されました。 最も一般的な(-)-CBDの化学合成法は、立体構造の決まったテルペンとオリベトールとの反応(=カップリング反応)を利用した方法です(下図:詳細な反応条件は省略)。 ※立体構造の決まった原料を使用して特定の立体構造の目的化合物をつくる手法をキラルプール法と言います。 CBDの合成によく使用される原料はメンタジエノール(=(+)-p-mentha-2,8- dien-1-ol)というテルペンです(上図)。このメンタジエノールは柑橘類の果皮に多く含まれるリモネン(=(+)-limonene)という天然のテルペンから合成できることが知られています。 上の例では省略しましたが、メンタジエノールとオリベトールとの反応でCBDを合成するには、反応の進行を促進する添加剤として「酸」を加える必要があります。酸がメンタジエノールを活性化し、活性メンタジエノールとオリベトールとのカップリング反応を誘発します。 反応に用いる酸の候補は多数ありますが、できるだけ目的のCBDを多く生成させられる酸が、適切な反応条件(溶媒、温度、時間、原料を混ぜる順序など)とともに、研究者によって探索されました。 1985年、ラファエル博士らは、メンタジエノールとオリベトールの反応においてアルミナに吸着させたBF3・OEt2(=三フッ化ほう素ジエチルエーテル錯体)を酸として用いるとCBDが56%収率で得られることを発見しました(下図)。 カンナビノイド研究の歴史がまだ浅かった30年前でも、この反応によって数十グラムのスケールでCBDを合成することに成功しています(収率46%:※同じ反応条件でもスケールが変わると収率は上下することがある)。 さらに、ZnCl(=塩化亜鉛)やp-TsOH(=p-トルエンスルホン酸)、Zn(OTf)2(=トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(II)=亜鉛(II)トリフラート)などを酸として用いた方法も報告されました。ここでは詳細は省略いたします。 具体的なCBDの合成手順 具体的には、まず、オリベトールと酸を混合し、この混合液にメンタジエノールを加えるという手順で合成反応が実施されました(※なお、先にオリベトールとメンタジエノールを混合してから酸を加えるパターンもあるようです)。 適切な溶剤(希釈剤)とともに適切な温度および適切な反応時間で撹拌後(=溶液を混ぜた後)、反応液を中和および濾過、洗浄して、純度の低いCBDが回収されました。 その後、得られた純度の低いCBDを結晶化させ、高純度のCBDが回収されました。 2. オリベトール酸の類似化合物からCBDを合成する経路 また、他の方法として、大麻草におけるカンナビノイドの生合成(代謝)経路を参考にした合成方法も報告されています。生合成経路ではオリベトールではなくオリベトール酸が反応の中間体として登場します。 実際に、オリベトール酸と類似の構造を持つオリベトール酸エステル(下図)を用いることにより反応が行われた例が報告されています。...
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