今年も折り返しが過ぎ、8月を迎えました。2023年上半期の国内外のCBD・ヘンプ業界ホットトピックをおさらいをしていきましょう。
1. ラオス、医療用・商用大麻の栽培、販売を解禁
ラオス保健省が医療用大麻の生産と販売を解禁しました。2022年12月28日付で「医療用・商用大麻の管理に関する保健大臣合意」を発布しており、2023年1月26日からその施行がなされています。
この合意では、大麻の栽培、加工、保管、流通販売、輸出入を条件付きで認可しました。国内で大麻関連事業を行う企業は、保健省に技術者を登録する必要があります。また、栽培を行う場合は、同省の認可を得た後、ガイドラインに則り設備を建設したり、種子を登録する必要があります。
認可が下りた事業者は、CBDを主成分とした製品の薬用利用が可能で、THC含有量0.2%以下の製品販売が認められています。
出典)
・医療用・商用大麻の栽培、販売を解禁(ラオス) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ (jetro.go.jp)
2. 香港、CBDを危険ドラッグに分類 終身刑も
2023年2月1日から、香港ではCBDが「危険ドラッグ」に分類され、禁止されることが決定しました。CBDがコカイン、ヘロインなどのハードドラッグと同様のものとして扱われることとなります。
理由としては、「国民の大半が大麻とCBDを混同し、一部の若者のCBD製品への興味から大麻の乱用につながるリスクがある」「CBDからTHCを完全に取り除くことが難しい」等が挙げられています。
CBDの罰則は、輸出入や生産の場合は、最高で終身刑と約8300万円(500万香港ドル)の罰金。所持の場合は、7年以下の懲役と約1700万円(100万香港ドル)の罰金となります。
出典)
・Hong Kong Customs takes strict enforcement action to control cannabidiol (CBD) from February 1 (with photo) (info.gov.hk)
・Hong Kong is criminalizing CBD as a 'dangerous drug' alongside heroin | CNN Business
・香港政府がCBDの禁止を発表。違反者には罰金や懲役などが課される見込み | TABI LABO (tabi-labo.com)
3. 三重県議会、グリーントランスフォーメーション時代の産業用大麻の活用について議論
2023年2月28日に開かれた「三重県議会定例会」にて、自民党の中嶋年規議員が「グリーントランスフォーメーション(GX)時代における産業用大麻の振興」をテーマとして、質疑を行いました。
■中島議員
三重県が、現在進行中の大麻取締法の改正時期を待たずして、栽培要件の緩和を昨年決断した点を評価しました。
日本の大気中の炭素の吸収固定化(ネガティブエミッション)の技術不足及び、グローバルでは大麻の産業応用が進んでいることを紹介しました。
また、以下のような観点も踏まえると、産業用大麻の将来性と可能性は非常に高く、「ゼロエミッションみえ」の取り組みに適していると述べました。
- 今後、国際的にカーボンプライシングの制度が実装されることが予想される中、大麻の産業応用が創り出す価値は、麻製品以上の数値が期待されている
- 国連貿易開発会議(UNCTAD)の調査レポートでは、ヘンプの世界市場規模は2020年の47億ドル(約6,338億円)から2027年には186億ドル(約2兆5,084億円)にまで成長する見込み
- 産業用大麻は綿花の代替として衣服に使用でき、綿花と異なり無農薬で栽培されるため環境負荷が低い
- 住宅や建築物の断熱材としてポリエステルの代替利用が可能
- 麻は、車体の軽量化を図るための素材としてのヘンプファイバーへの応用が可能
- コンクリートの代替素材として、ヘンプクリートと呼ばれる利用が可能で、2024年のパリオリンピックで公共施設建築物に利用される
- 航空燃料、蓄電池素材、バイオコークスとしての活用も期待でき、実証研究段階である
産業用大麻の将来性と可能性をどのように評価し、今後どのように取り組んでいくべきと考えるか、大麻のCO2の吸収固定化等の特性を踏まえ 「ゼロエミッションみえプロジェクト」として、位置付けてみてはどうかと質問を投げかけました。
■更屋英洋
三重県の大麻取扱者の免許要件の大幅緩和に伴い、現在栽培を進めている農業法人の栽培面積の拡大や、新規の参入者が想定されるため、以下の施策等を進めていくと回答しました。
- 市・町や農業委員会に働きかけ、耕作が放棄された農地等の斡旋
- 特に現在栽培に取り組んでいる農業法人の栽培面積拡大には、経営が安定化するよう、約5年先までの営農計画の策定、事業拡大に向けた中小企業診断士などの専門家派遣、設備投資のための国の補助事業活用などの支援
- 大麻栽培を希望する農家から支援要請に関しては、円滑に栽培が始められるよう、栃木県の生産者の紹介等の研修先の確保、新たに就農する人材への研修や経営開始までの収入確保
このように、大麻産業拡大に向けた前向きな議論が交わされた定例会となりました。
出典)
・三重県議会 中継 令和5年第1回定例会(2月28日)一般質問 中嶋年規議員(自由民主党) (mie.lg.jp)
・三重県|地球温暖化対策:ミッションゼロ2050みえ~脱炭素社会の実現を目指して~ (mie.lg.jp)
4. NBA、大麻の薬物検査を撤廃
「MAJIJUANA MOMENT」の編集者であるカイル・イェーガー氏の記事によると、上記の新契約の期間は7年間であるとのことです。つまりNBAの選手は、今後7年間、大麻使用による罰則を受けないことになります。
NBAの選手であるケビン・デュラント氏が設立したベンチャーキャピタルが、大麻のテック企業である「ウィードマップス(Weedmaps)」と連携を強めたり、ボクシング元ヘビー級王者のマイク・タイソンなど250名以上のトップアスリートによる大麻擁護団体「Athletes for CARE(ケアを求める競技者)」が設立されたりしました。今後も、大麻とスポーツ界の距離が縮まっていきそうです。
出典)
・NBA Clarifies Players Won't Be Able To Promote Marijuana Brands, But League Will Allow Passive Investments And End Testing - Marijuana Moment
・NBA will not randomly test players for marijuana again this season | NBA.com
・Kevin Durant, Rich Kleiman On Cannabis, Partnership With Weedmaps: ‘The Band-Aid’s Been Ripped Off’ (forbes.com)
・Athletes 4 Care Ambassadors - Athletes for CARE
5. シカゴ・カブス、CBD企業のスポンサー契約へ
2023年4月7日、日本人の鈴木誠也選手が所属するMLB球団の「シカゴ・カブス」が、アメリカのCBD飲料メーカー「MYND DRINKS」とのスポンサー契約に至ったことを同社のホームページにて公表。MLBリーグ全体としては、2022年10月に、有名CBD企業である「シャーロット・ウェブ(Charlotte’s Web)社」とスポンサー契約を結んでいますが、1球団とCBD企業との契約はカブスが初めてとなります。
シカゴを拠点とするMYND DRINK社は、未来のウェルネスとリカバリーをコンセプトとしており、科学者のチームによる専門的なノウハウに基づき、100%植物由来のCBD飲料を販売しています。
球団側は、CBD企業とスポンサー契約を結ぶにあたり、禁止物質が含まれていない安全な製品の証明となる「NSF Certified for Sport®」の取得が完了した製品を選ぶ必要があります。MYND DRINK社の「エルダーベリー・パッションフルーツ」「レモン・ジンジャー味」「オレンジ・マンゴー」の3フレーバー全てで最高の安全基準を満たし、認証を取得しています。
カブスのコーポレートパートナーシップ担当バイスプレジデントのアレックス・セイファース氏は「MLBが球団にCBDカテゴリーを開放したことで、私たちは新たなパートナーシップの機会と提供を探ることができました」「CBD企業と提携した最初の球団であることを誇りに思いますが、私たちにとってより重要だったのは、そのブランドが適切なのかを確認することでした。MYND DRINKS社はシカゴを拠点とする企業で、全体的なウェルネスを促進し、日々のストレスの緩和を助けてくれます。」等のコメントを残しています。
一方、MYND DRINKS社のCEOサイモン・アレン氏は「伝説的なシカゴ・カブスとのパートナーシップを発表できたこと、健康とウェルネスという当社のビジョンをメジャーリーグで共有していただけることを、大変嬉しく、そして光栄に思います」とコメントしており、両社の関係が良好であることがうかがえます。
また、MLBは2019年より大麻を禁止物質リストから除外しており、野球界においても大麻CBDとの繋がりが増していきそうです。
出典)
・Sparkling CBD Drink | Plant Based Elixir – MYND Drinks UK
・Press release: Chicago Cubs announce MYND DRINKS as official CBD partner (mlb.com)
6. 米X(元Twitter)社、アメリカでの大麻の広告規制を緩和
2023年4月25日、Xは同年2月に緩和した広告ポリシーを追加でアップデートし、大麻の広告におけるルールを緩和することを発表しました。アメリカの大麻合法州において、より多くの広告主企業を呼び込むことが狙いとされています。
これまで、CBD、THC、大麻関連製品などに関して、自社で運営するWebサイトやECサイトのリンク添付は可能でしたが、大麻製品を広告に使用したり、販売を促進することはできませんでした。
しかし4月の改定では「今後、認定を受けた広告主は、広告クリエイティブにパッケージされた大麻製品を掲載することができます」との記載がなされており、認定を受けた広告主は、大麻製品の広告や販売促進が可能になりました。
ニューヨークを拠点とする大麻産業マーケティング企業「Mattio Communications」社によれば、Xは4月時点において、アラバマ州、アーカンソー州、フロリダ州、ミネソタ州、ミシシッピー州、 ミズーリ州、オクラホマ州、ペンシルベニア州、プエルトリコ、ロードアイランド州、サウスダコタ州、ウエストバージニア州のユーザーを対象とし、医療用大麻広告の掲載を許可しているとのことです。
出典)
・Enabling more brands to connect with the cannabis conversation (twitter.com)
・Twitter further eases US cannabis advertising rules, adds new markets (mjbizdaily.com)
7. 国連機関が「薬物使用の非犯罪化」に関する声明を発表
2023年6月23日、国連の人権活動の主たる機関「国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)」は新たな声明を発表しました。内容としては、国際社会に向けて、違法薬物使用者に対してのアプローチを「刑罰」から「支援」へと変更することで「麻薬戦争」に終止符を打ち、全ての人の人権を尊重・保護する政策を推進する必要性を説くものでした。
これは、6月26日の「国際薬物乱用・不正取引防止デー」に先駆けて公開され、メッセージ性の強い声明となりました。声明の要旨は以下の3点となっています。
違法薬物の犯罪化は医療サービス享受の障壁となる
声明では「犯罪化は医療サービスへのアクセスへの障壁となり、その他の人権侵害をもたらす」として刑法や行政制裁のもたらす悪影響について言及。
「国連の薬物関連問題に関する共通立場が求めているように、個人のための薬物使用と所持は緊急に非犯罪化されるべきである」と主張している。
「ハームリダクション」の社会実装の提言
声明で用いられる「ハームリダクション」とは、依存性が高く使用を中止することができない薬物使用の個人ダメージ及び、社会のリスクの軽減を目的とする政策とプログラムのことを指します。
代表的な事例としては、アメリカ・オレゴン州が挙げられます。同州では2020年にLSD、MDMA、マジックマッシュルームなどが、個人使用目的で少量の所持の場合に限り非犯罪化しています。
違法薬物の取締がマイノリティへの差別に用いられている
声明では、麻薬の規制が、アフリカ系の人々、先住民族、マイノリティに向けられた差別と重なると述べています。
アフリカ系の人々は、不当な法執行機関の介入、麻薬関連犯罪による逮捕や投獄などの扱いを受けていると問題提起をしています。
またコカの葉など、先住民族が伝統的に使用してきた物質の犯罪化は、先住民族の知識体系や医学の抑圧・弱体化・疎外につながり、さらには先住民コミュニティの健康と福祉に深刻な被害をもたらす可能性があるとしています。
さらに、女性は犯罪化と投獄の影響を特に受けており、男女不平等が反映されている可能性があるとも説明しています。薬物関連の犯罪での有罪判決、男性が19%に対し、女性が35%となっていることが、それを表しているとしています。
出典)
・UN experts call for end to global ‘war on drugs’ | OHCHR
・「個人の薬物使用は緊急に非犯罪化されるべき」 国連機関が声明を発表(KAI-YOU.net) - Yahoo!ニュース
8. ルクセンブルク、嗜好用大麻を合法化
2023年7月21日、ルクセンブルクは嗜好用大麻の所持と栽培を合法化(法律の施行)しました。ルクセンブルクは、マルタに次いで嗜好用大麻を合法化する、EUで2番目の国となりました。
ルクセンブルクは2018年に嗜好用大麻を合法化する計画を発表、2021年に嗜好目的での大麻の栽培や使用を合法化する法案を提出、様々な諸事情を経て、23年6月28日に議会は嗜好用大麻の所持と栽培を合法化する法案を可決しました。
法案の内容としては、成人は3gまでの乾燥大麻の所持、1世帯あたり4株までの大麻の自家栽培が可能といったものになります。大麻の栽培は自宅などのプライベート空間で行い、公共の場から見えないようにする必要があります。引き続き、公共の場での所持・消費は禁止となり、判明した場合は、「3gを超える所持で6ヶ月以下の懲役または2,500ユーロの罰金」等の罰金刑となります。
今回の法案は、麻薬関連の犯罪及び、ブラックマーケットの取締を目指す政府の活動の一環とみられており、今後は、政府が管理する大麻の生産及び販売の土台を発展させていく予定です。
サム・タンソン(Sam Tanson)法務大臣は、「国民が大麻を自宅で育てることができるようにすることから始めたいと思っています。」「大麻の消費者は違法な状況にはなく、生産から輸送、販売に至るまでの違法なサプライチェーン全体を我々は支持しない、という考えです。」「違法なブラック・マーケットから距離をおくためにできる限りのことをしたいと思っています。」等の発言を残しています。
出典)
・Law on the domestic cultivation of cannabis has been published in the Official Journal and will enter into force on 21 July 2023 - Ministry of Justice // The Luxembourg Government (gouvernement.lu)
・These European Countries Could Legalize Cannabis In 2022 (forbes.com)
・ルクセンブルク、大麻の栽培と使用を合法化へ 欧州で初 - CNN.co.jp
・Luxembourg first in Europe to legalise growing and using cannabis | Luxembourg | The Guardian
9. アメリカの大麻合法化情報
2023年8月現在、アメリカでは23州とワシントンDCで大麻が合法化となっており、人口の約半分が大麻合法化の州に居住しています。以下が、アメリカの大麻合法化の直近の動向のまとめになります。
2022年合法化2023年施行
・メリーランド州
2023年7月1日より施行し、21 歳以上の成人は大麻を合法的に購入および所持できるようになっています。
・ミズーリ州
2022年の12月に合法化し、2023年7月時点では、小規模事業者向けの情報が随時更新されています。
・ロード・アイランド州
2022年の5月に議員らが合法化法を承認し、2023年8月時点で施行が進んでいます。
2023年合法化2024年〜施行
・ミネソタ州
21歳以上の大麻使用を合法化した全米で23番目の州となりました。2023年8月1日より、21歳以上のミネソタ州民に一定量の大麻および大麻製品の所持と使用が許可されます。その他の施行は、2025年以降になる可能性があります。
・デラウェア州
2023年に大麻を合法化しましたが、施行の予定等の情報は、まだ開示されていないようです。
このように、今後もアメリカでは大麻の規制緩和が進んでいくものと予想されるため、その動向に注目です。
出典)
・Where marijuana is legal in the United States (mjbizdaily.com)
・Adult-Use Cannabis Legalization (maryland.gov)
・Cannabis Regulation | Health Services Regulation | Health & Senior Services (mo.gov)
・KNOW YOUR RIGHTS: Recreational Marijuana in RI | ACLU of Rhode Island (riaclu.org)
・Rhode Island (mpp.org)
・Minnesota Office of Cannabis Management | State of Minnesota - Office of Cannabis Management (mn.gov)
・About the Legislation | State of Minnesota - Office of Cannabis Management (mn.gov)
・Delaware Cannabis Advocacy Network |