日本の皆さん、こんにちは!
東京とアメリカのオレゴン州に拠点を構える大麻の会社、OFF株式会社の井上です。日本では2019年末からCBDの事業を開始し、オレゴン支社は昨年立ち上げました。
今回はCBD部さんが運営されているCBDアドベントカレンダー2024に参加させて頂く関係で執筆した記事です。日本の大麻、ヘンプ、CBD業界のお役に立てれば幸いです。
1. オレゴンとは?
まずは、私たちも拠点を構えるオレゴンについて簡単に説明します。
オレゴンはアメリカの西海岸に位置し、カリフォルニア州の北にあります。
“Keep Oregon Weird!”の州のスローガンにもある通り、色々な意味でぶっ飛んだ人が多い州です。
大麻文脈でいうとオレゴンは全米で初めて大麻を非犯罪化した州です。サイケデリックスの文脈ですとうつ病などのメンタルヘルスに効くと言われるシロシビン(マジックマッシュルーム)の医療利用を2020年に全米で初めて合法化した州でもあります。安楽死が合法だったり、消費税がなかったりする変わった州です。
オレゴン州の大麻の月次売上推移はこんな感じです。人口が多い州ではないため、マーケットは大きくありません。しかし、規制環境は日本と比べると緩く、大麻の非犯罪化も早かったためか、オレゴンの大麻マーケットは多様です。
2. オレゴン発の大麻企業
多様なオレゴンの大麻業界を代表するユニークな大麻企業を紹介します。
2-1. OregonCBD
OregonCBDはヘンプの種子を開発、生産、販売する会社です。特に、フェミナイズされた三倍体の種子の開発に焦点を当てています。通常のヘンプは各細胞に染色体が2セット備わった二倍体です。特殊な育種技術の開発により三倍体のヘンプの種子を開発しています。三倍体のヘンプは収穫量も多く、レアカンナビノイドもリッチに含まれており、望まない受粉も防ぐことができます。
2-2. Phylos
Phylosは遺伝学の知見を大麻分野に応用した大麻の種子に関する企業です。OregonCBDと比べると、Phylosは現代の科学を駆使してフェノハンティングを行っています。オレゴンでたった一つの大麻のR&Dライセンスを保有し、DNAシーケンスのイルミナと提携し、大麻のゲノムデータを解析しています。
世界中から大麻のDNAサンプルを集め、3D上にそのDNAをマッピングしたPhylos Galaxyは大麻の遺伝的多様性を可視化しています。
また、THCVリッチな種子を多く含むために必要な遺伝マーカーを特定し、特許を取得しています。THCVをなんと20%以上も含んでいる種子です。
2-3. True Terpenes
True Terpenesは主に大麻由来のテルペンを提供する企業です。テルペンは、大麻を含む多くの植物に含まれる香り成分です。その健康上の効能にも注目が集まっています。例えば、βカリオフィレンはCB2受容体のアゴニストとしても有名なように、大麻由来の成分で注目すべきはカンナビノイドに止まらないのです。アントラージュ効果の研究などで有名なイーサンルッソ博士を広告塔に全世界にテルペンを供給しています。
2-4. FloraWorks
FloraWorksはレアカンナビノイドに特化したバイオテクノロジー企業です。代表は大麻関連での2度目の起業です。1度目は大麻からCBDなどの成分を抽出する原料の製造で起業し、Exitしています。昨年、CBNの睡眠効果に関して1500人を対象にRCTで臨床試験を実施し、効果を示しました。カンナビノイドとAIを活用した創薬の方向性を模索しています。
この研究では、CBNをプラセボおよびメラトニンと比較して睡眠改善の効果を評価しました。3つの異なる用量(25mg、50mg、100mg)のTruCBN™と、4mgのメラトニンを被験者に投与し、睡眠の質、ストレス、不安、痛み、および幸福感に与える影響を調査しています。
2-5. Wyld
Wyldは大麻由来成分を含むエディブルブランドです。果汁を用いた美味しいTHCグミが有名で、オレゴン州外でもよくみかけます。2022年のメディアの取材によると、売上は300億円以上、従業員1000人近くとのこと。CBD商品に関しては、オーガニックスーパーのWhole Foodsで大きな棚を獲得しています。
2-6. Global Hemp Innovation Center
Global Hemp Innovation Centerはオレゴン州立大学に設置された世界トップレベルのヘンプに関する研究機関です。つい先日もUSDAから1000万ドルの助成金を獲得し、アメリカのヘンプリサーチのロードマップを公開しています。
最近だと、CBD抽出後に残ったヘンプバイオマスの副産物を安全な飼料としてアップサイクル可能だという酪農部門の研究結果が注目されています。
3. オレゴン大麻業界の課題
オレゴンの大麻業界は小さいながらも、ユニークで先進的な技術を持つ企業が多く存在します。そして彼らは州外のより大きなマーケットに向けてプロダクトを展開し、成功を収めています。オレゴンは全米で初めて大麻を非犯罪化した州なだけあって、全米の大麻業界を牽引しているともいえます。
ところが、大麻のノーマライゼーションには遠い状況です。オレゴンの大麻市場を規制するのはOLCCという機関ですが、このOLCCが去年4月に監査を受け、規制緩和するよう勧告を受けている状況です。
上図を見てください。例えば、アルコール業界と比較した際に大麻業界に課されたオペレーションは膨大です。特に、90日分の映像を保存するビデオ監視システム、鉄製のドアとドア枠、および高価な製品トラッキングシステムに関する取り決めは大麻業界固有のもので、大麻関連企業にとって大きなコストになっています。
また、こちらの図を見ると、大麻事業と非大麻事業では課税方法が異なり、大麻事業は非大麻事業に比べ、大きな税負担を強いられていることが分かります。
4. 大麻のノーマライゼーションのための重点施策
大麻のノーマライゼーションはアメリカ、日本どちらを見ても道半ばです。弊社は日本とアメリカにおける大麻業界の知見や経験、ネットワークをもとに、以下の分野に注力しています。これからも多様な人材を巻き込み、科学技術に投資をすることで、世界に誇れる日本の大麻業界を作っていければと思います。
4-1. 水分散型カンナビノイド原料の開発
大麻に含まれる化合物、カンナビノイドは水に溶けません。そのため、特殊な加工をして、水に分散しやすくします。水分散型のカンナビノイド原料を弊社はすでに国内の水分散技術の会社と共同開発しております。
今年はこの水分散型原料を評価するための指標や測定メソッドを開発し、水分散技術を改善している最中です。この原料の特徴は水に分散するだけではありません。バイオアベイラビリティを高めることもできます。
4-2. カンナビノイド配合ドリンクの開発
アメリカでは大麻は「吸う」ものから「飲む」ものへ徐々にシフトしています。
アルコールは飲んで酔うものですから、ドリンクを使用して酔うことへの違和感がないためです。また、アルコールの健康被害を懸念して、大麻飲料を使用する方もいます。大麻飲料に特化した業界団体も立ち上がり、急成長中の剤形です。
弊社でも、Chilling Highという水分散型のカンナビノイドを配合したRTDを販売しています。
4-3. TOKYO420
TOKYO420という「音楽とカナビスでつながる」がコンセプトの大麻 x 音楽のイベントを毎年開催しています。今年で3年目です。私たちにとってはユーザーに対して新商品をショーケースし、ユーザーと直接対話させて頂くための良い機会になっています。今年も4月20日に渋谷のMIYASHITA Park内のORという場所で開催します。詳細はこちらです。ご興味ある方は是非ご参加ください。
4-4. 大麻インダストリーツアー
去年オレゴンに支社を立ち上げてから実施しているのが、この大麻観光事業です。
アメリカ現地のディスペンサリーツアーはもちろんのこと、大麻栽培やCBD抽出といったインダストリーツアーも可能です。こちらもお気軽にご連絡ください。