この記事ではエンドカンナビノイドシステムという人間にも脊椎動物や線虫にも備わっている生物学的な体内の仕組みについて解説する記事です。
研究の歴史はまだ浅く、分かっていないことも多い新しい研究分野ですが、CBDが健康に良い理由を知る上でも欠かせない体内の仕組みです。薬学や生物学に不慣れな方でも理解して頂けるよう本質を抑えつつ、分かりやすい説明を心がけました。それでは早速解説に進みましょう。
1. エンドカンナビノイドシステム(ECS)とは?
まずはじめにECSとは何かを簡単に説明します。
エンドカンナビノイドシステムとは、人間の身体に存在するカンナビノイド受容体(CB1受容体とCB2受容体)とエンドカンナビノイド(アナンダミドと2-AG)、そして、エンドカンナビノイドを生合成する合成酵素とエンドカンナビノイドを分解する分解酵素等によって構成される生物学的なシステムのことをいいます。
カンナビノイド受容体は鍵穴であり、エンドカンナビノイドは鍵だと思ってください。アナンダミド(鍵)はCB1受容体(鍵穴)に結合し、2-AG(鍵)はCB1受容体とCB2受容体(鍵穴)の両方に結合します。
ECSとは、カンナビノイド受容体とエンドカンナビノイドが相互作用するエンドカンナビノイドの体内システムのことです。ECSによって人間はホメオスタシス(恒常性)を維持、調節していると考えられています。ホメオスタシスとは、外部環境の変動にもかかわらず、安定した内部環境を維持する人間の性質のことです。
2. カンナビノイド受容体とは?
(引用:カンナビノイドの科学)
カンナビノイド受容体にはCB1受容体とCB2受容体の2つが存在します。
CB1受容体は脳や中枢神経系に、CB2受容体は末梢神経系や免疫細胞に主に発現します。カンナビノイド受容体は、身体に存在する多くの受容体の中で、Gタンパク質共役受容体というメジャーな種類の受容体に分類されます。
Gタンパク質共役型受容体(カンナビノイド受容体など)に情報伝達物質(エンドカンナビノイドなど)が結合すると、Gタンパク質は、酵素やイオンチャネルなどの効果器タンパクへその情報を伝える役割を果たしています。
3. エンドカンナビノイドとは?
エンドカンナビノイド(内因性カンナビノイド)は、体内に存在する神経伝達物質です。いままでに研究で同定され、生理学的にも重要なエンドカンナビノイドが2つあります。
・アナンダミド(AEAまたはアラキドノイルエタノールアミド)
・2-アルキドノイルグリセロール(2-AG)
エンドカンナビノイド(アナンダミドや2-AG)がカンナビノイド受容体(CB1受容体やCB2受容体)に作用することでECSの機能が働くわけですが、アナンダミドはCB1受容体に結合し、2-AGはCB1受容体とCB2受容体の両方に結合します。
アナンダミドはN-アシル転移酵素とホスホリパーゼD、2-AGはホスホリパーゼC(PLC)とジアシルグリセロールリパーゼ(DGL)という酵素によって生成されます。また、アナンダミドは脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)、2-AGはモノアシルグリセロールリパーゼ(MGL)という酵素によって分解されます。
エンドカンナビノイドシステムの研究の歴史について触れておきます。
まず1990年にTHCと特異的に結合する受容体がラットの脳からクローニングされ、それがCB1受容体と名付けられました。その後、1992年にブタの脳からアナンダミドは抽出、同定され、1995年、イヌの腸およびラットの脳から2-AGが同定されました。ちなみに、エンドカンナビノイドは化学構造上はカンナビノイドではなく、脂肪酸誘導体です。
アナンダミドはカンナビノイド受容体以外にもバニロイド受容体のアゴニストとしても働くため、エンドバニロイドとしても知られています。これら以外のエンドカンナビノイドについてはまだ研究途上です。
4. ECSの重要機能とそのメカニズム
研究によると、ECSはホメオスタシスに重要な役割を果たしているようです。ECSは身体の以下の機能を調節することで、ホメオスタシスを維持するのに役立っています。
睡眠、食欲、体温、代謝、消化、吐き気、緊張や不安、認知、記憶、感情、免疫、疼痛、炎症など
では、エンドカンナビノイドシステムはどのようにしてそれらを調節しているのでしょうか? どのように機能しているのでしょうか?
エンドカンナビノイドは細胞内で起きた変化を情報シグナルとして伝達しますが、ECSの仕組みはユニークなため、まず通常どのように細胞内で情報が伝達されるのかを簡単に説明します。私たちの細胞は神経信号を介して通信しています。細胞を刺激すると、細胞のシナプス前部分をトリガーにして、ホルモン、神経伝達物質、特殊タンパク質、シグナル伝達分子などの化学物質を放出します。神経信号は、前方の方向に移動します。シナプス前細胞からシナプスを横断し、シナプス後細胞の特定の受容体に結合します。そして、信号は脳に到達するまで進みます。脳はその後、体が刺激にどのように反応するかの司令を運ぶ化学物質を放出します。
次に、ECSが通常の神経伝達物質の伝わり方に比べ、ユニークだということを説明します。例えば、不快な刺激のようなストレス因子は、ECSが内因性カンナビノイドを放出する引き金となります。しかし、シナプス前細胞がエンドカンナビノイドを放出するのではなく、化学物質を放出するのはシナプス後細胞です。エンドカンナビノイドは、ほとんどの神経伝達物質とは異なり、逆方向に移動します。逆行性シグナルと呼ばれています。シナプス後神経細胞はエンドカンナビノイドを放出し、エンドカンナビノイドはシナプスを横切ってシナプス前神経細胞のカンナビノイド受容体に付着します。エンドカンナビノイドは受容体に結合すると、ニューロンの活動を調節する能力を持っています。これがエンドカンナビノイドシステムが体内のホメオスタシスを維持するメカニズムです。
5. エンドカンナビノイド欠乏症とは?
前の章でECSによって身体のほぼあらゆる機能が調節されていることが分かって頂けたと思います。
このECSがうまく働かないことで起こっているのではないかという疾患があります。代表的なものですと、偏頭痛、線維筋痛症、そして過敏性腸症候群です。病院の診断で、心因性によるものだと診断されたり、様々な薬を試したが、効果がなかった方はエンドカンナビノイド欠乏症を疑ってみてください。医学的にも研究の途上ですが、体内のエンドカンナビノイド量やその産生、代謝などに問題があるのではないかという仮説が検証されつつあります。
6. ECSの機能を高める方法
これまでの章を通して、ECSの働きは人間の健康を維持する上で大事な仕組みであることを説明してきました。最後のこの章ではそんなECSの機能を高める具体的な方法を何個かお伝えできればと思います。
6-1. 運動
ランナーズハイという言葉を聞いたことのある人は多いでしょう。これに関わっているのも実はECSです。なんと20分以上、できれば30分程度のランニングによってエンドカンナビノイドの産生(分泌)が増えることが分かっています。
ランニングの次にエンドカンナビノイドの産生が増えた運動は、サイクリングだったようです。経験上ランニングの後はポジティブな感情を抱きやすい気がしていましたが、科学的にその理由が解明されつつあります。ちなみに、エンドカンナビノイドは脳内マリファナとも呼ばれたりします。
6-2. 食事
母乳にもたくさん含まれるというアラキドン酸は、アナンダミドや2-AGの構成要素とも知られており、アラキドン酸を含む肉、卵、乳製品を食べるとエンドカンナビノイド量が増えるようです。そして、体内での産生が難しいと言われているオメガ3系脂肪酸(DHAやEPAなど)を取ると、CB1受容体の発現が促進されるようです。オメガ3系脂肪酸は、脂っこい魚、クルミ、亜麻、ヘンプシードなどに含まれています。
スパイスや野菜などに含まれる植物の二次代謝産物(テルペン、フラボノイド、その他のポリフェノール化合物)はCB2受容体の働きを高めます。テルペンとして有名なβ-カリオフィレン(BCP)はその代表的な物質です。BCPは黒胡椒、クローブ、ローズマリーなどに含まれます。THCが強く結合するCB1受容体は食欲を増進することで有名ですが、CB2受容体は食欲を抑制の方向で調整することで知られています。CB2受容体を活性化することで、肥満防止にも繋がるかもしれません。
6-3. CBD
最後にCBDがECSにどのように作用するのかを説明します。CBDを取ると、2-AGを分解する酵素のFAAHなどを阻害することで、体内の2-AGの量が増えることが分かっています。CBDはCB1受容体やCB2受容体に直接的には作用しませんが、エンドカンナビノイドの分解に関わる酵素に作用することで、間接的にカンナビノイド受容体にも影響を与えています。
7. 出典
Isolation and structure of a brain constituent that binds to the cannabinoid receptor
Identification of an endogenous 2-monoglyceride, present in canine gut, that binds to cannabinoid
2-Arachidonoylglycerol: a possible endogenous cannabinoid receptor ligand in brain
The molecular logic of endocannabinoid signalling
Endogenous cannabinoids mediate retrograde signalling at hippocampal synapses
Emerging Class of Omega-3 Fatty Acid Endocannabinoids & Their Derivatives
Anti-inflammatory ω-3 endocannabinoid epoxides
Nutritional omega-3 deficiency abolishes endocannabinoid-mediated neuronal functions
Do Endocannabinoids Cause the Runner’s High? Evidence and Open Questions
A Systematic Review and Meta-Analysis on the Effects of Exercise on the Endocannabinoid System
Effects of Cannabidiol on Exercise Physiology and Bioenergetics: A Randomised Controlled Pilot Trial
Modulation of fear memory by dietary polyunsaturated fatty acids via cannabinoid receptors
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