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新しいCBDの規制(12月12日施行)に伴い事業者がとるべき対応と今後の業界予想

この度、CBDなどのカンナビノイドを含む商品における新規制が厚労省より交付されました。

詳しくは令和6年12月12日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の一部が施行されますをご覧ください。

CBD事業を営む事業者向けに、新規制の内容を正しく理解し、どう対応すれば良いのか明確にしていただくために、この記事を書いています。

 

目次

1. 新規制の概要

2. 具体的な商品分類
(ア) 油脂 (常温で液体のもの) 10ppm
(ア) 粉末 10ppm
(イ) 水溶液 0.1ppm
(ウ) その他  1ppm

3. 商品が規制対象になるかを確認する方法
 ①原料の成分表からΔ9-THCとΔ9-THCAの濃度を確認する
 ②Total Δ9-THCを算出する
 ③商品に添加する原料の濃度(%)を掛け算する
 ④商品分類を確認し、規制の対象か判断する

4. 今後のCBD業界への影響の予想
 ①原料や商品の価格が上がる
 ②成分分析が厳格化される
 ③リスク回避のために低濃度の商品が増える
 ④新制度での商品の流通開始 (年末年始を目処)

 

1. 新規制の概要

新規制の内容は、麻薬及び向精神薬取締法で規制されている違法成分「Δ9-THC」を規定値以下のものだけ、流通を認めるというものです。

製品等に残留するΔ9-THC(テトラヒドロカンナビノール)について残留限度値が設けられ、

この値を超える量のΔ9-THCを含有する製品等は「麻薬」に該当することになります。(Δ9-THCの含有量が限度値以下の製品は、麻薬規制の対象になりません。)

現在お手持ちの大麻草由来の成分を含有する製品について、上記値を超える製品である可能性がある場合は、施行期日(令和6年12月12日)までに適切に処分等してください。

商品の形状ごとに分類があり「%」で示されています。

(ア) 油脂(常温で液体であるものに限る。)及び粉末
百万分中十分の量 (10ppm、10mg/kg、0.001%)

(イ) 水溶液 
一億分中十分の量(0.1ppm、0.1mg/kg、0.00001%)

(ウ) (ア)及び(イ)に掲げる物以外のもの 
百万分中一分の量 (1ppm、1mg/kg、0.0001%)

出典:厚労省

なぜこれが重要かというと、商品を製造販売している事業者にとっては「自社の商品は麻薬に該当するのか/しないのか」を確認する必要があるからです。

そして、商品を使用する消費者へ、製品をいつまで使用・廃棄しなければならないか案内をしなければなりません。

 

2. 具体的な商品分類

以下は厚労省が出している資料です。

%を使うととても小さい値になるためppmという単位を用いて解説していきます。(1ppm = 0.0001%)

自社の商品がどれに該当するかを判断いただくため、大きく4つに分けて解説していきます。

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(ア) 油脂 (常温で液体のもの) 10ppm

ここには主にCBDオイルが該当します。

注意点は「グリセリンと脂肪酸が結合した化合物を90%以上含む」という記載です。この化合物とは、主にMCTオイルやヘンプシードオイルなどのキャリアオイルを指します。

カンナビノイド(CBD、CBN、CBG等)は「グリセリンと脂肪酸が結合した化合物」ではないので、ここに分類されるには液体に占めるカンナビノイドの割合を10%以下にする必要があります。

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なぜ10%以下に抑える制度になっているかというと、医薬品として認可されるCBDオイル「Epidiolex」の濃度が10%だからと予想します。

安全性が検証された医薬品の10%という基準に健康食品としてのCBDオイルも合わせてほしいという制度設計の意図が見えます。

10%以上の高濃度で作る場合は「(ウ)その他」に該当しますが、そうなると1ppmという厳しい基準を満たす必要があり、実質高濃度でのCBDオイルの製造は今後難しくなる予想です。

ベイプについては、プロピレングリコール(PG)等ではなく、テルペンなどの精油を希釈剤に使えば、10%以下に濃度を抑えることでここに該当すると思われます。

 

(ア) 粉末 10ppm

主にCBD、CBN、CBGアイソレート原料が該当します。

「日本薬局方における粗末以下の粒度のもの」と記載がありますが、粗末の定義をこちらで確認してみると、粒径が850μmより小さいものという定義になるようです。

画像出典:日本薬局方

 

そのため、ブロードスペクトラムを砕いても難しく、ここに該当するのはアイソレート原料のみになると思われます。

 

(イ) 水溶液 0.1ppm

こちらは水溶性CBDを溶かした飲料が該当します。

飲料は一般的に100ml〜350mlなど重量が大きく、高濃度の飲料を作ってもせいぜい水溶性CBDの含有率は0.1%くらいかと思います。

水溶性CBD粉末が10ppm以下で販売されることになるため、上限値を超えるリスクは低いと思われます。

「粘度が 100mPa・s 未満」という基準で「水溶液」と「その他」のどちらに分類されるか決まります。

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出典:キーエンス

 

水に希釈をしている場合は水溶液になりますが、糖や水飴など粘度が高いものに希釈をする場合は注意が必要です。

 

(ウ) その他  1ppm

こちらは主に以下が該当します。

  • ・カンナビノイドが10%を超える液体油脂(オイルやベイプ等)

  • 固形油脂(ブロードスペクトラム原料等)

  • その他の形状の製品

例えば、ブロードスペクトラム原料を1ppm以下の精度で抽出することは難しいため、実質流通が不可能になります。

 

3. 商品が規制対象になるかを確認する方法

厚労省のWEBサイトでは「Δ9-THC」としてか記載がありません。

しかし、厚労省が別途作成している資料から、正確な定義としては「Total Δ9-THC」を用いると安全性が高いと予想しています。

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出典:麻(ヘンプ)の活用に関する臨時勉強会 令和6年6月17日 厚労省 医薬局監視指導・麻薬対策課

「Total Δ9-THC」とは規制対象となるΔ9-THCの含有量に加えて、熱を加えるとΔ9-THCに変化する「Δ9-THCA」を「みなし麻薬」として0.877という数値を乗じた量を加えた、総和のことです。

「商品のTotal Δ9-THCの濃度」は以下の計算式で算出できます。

原料のTotal Δ9-THCの濃度(%)× 商品に添加する原料の濃度(%)

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上記は仮で数値を当てはめていますが、この場合、商品のTotal Δ9-THCの濃度は以下のようになります。

  • 原料のTotal Δ9-THCの濃度:0.0002%(2ppm)

  • 商品に添加する原料の濃度:5%

  • ・商品のTotal Δ9-THCの濃度:0.00001%(0.1ppm)

どのように商品のTotal Δ9-THCを計算していくか解説していきます。

 

①原料の成分表からΔ9-THCとΔ9-THCAの濃度を確認する

以下は原料の成分表です。赤枠で囲われた部分が、規制対象となる成分(Δ9-THCとΔ9-THCA)の含有率を示しています。

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LODとはLimit of Detection(検出限界)という検出/非検出を分ける境目の値です。

値の濃度以下であれば非検出(ND:Non Detected)になり、その値以上であれば「%」で含有率が表記されます。

表から以下の2つは両方とも1ppm以下であることがわかります。
・Δ9-THC:0.0001%(1ppm)以下
・Δ9-THCA:0.0001%(1ppm)以下

 

②Total Δ9-THCを算出する

Total Δ9-THCは以下の計算式で算出します。

Total Δ9-THC = Δ9-THC + Δ9-THCA × 0.877

①の結果を当てはめると、Total Δ9-THCは「1ppm + 0.877ppm = 1.877ppm」以下であることがわかります。

 

③商品に添加する原料の濃度(%)を掛け算する

仮のこの原料で5%のCBDオイルを製造するとします。商品のΔ9-THCの濃度は以下の計算式で算出できます。

1.877ppm × 5% = 0.09ppmとなります。

 

④商品分類を確認し、規制の対象か判断する

上記はCBDオイルを想定していますが、配合率が5%なので「(ア)油脂」に該当しますが、基準に適合する製品となります。

 

4. 今後のCBD業界への影響の予想

今回の法律の施行による、今後のCBD業界の変化について予想していきます。

①原料や商品の価格が上がる

価格が上がる理由については2つあります。

1つめは原料の製造工程の変化です。

原料を新制度の基準で用意しようとすると、Δ9-THCを高い精度で取り除く必要があります。一般的にはΔ9-THCをCBNに変換する、クロマトグラフィーを使ってΔ9-THCを分離するという2つの方法を取ります。この工程を繰り返し行うことでCBDのロスが起きるため収率が悪くなります。

2つ目は使用する分析機器や検査回数の変化です。

これまでの基準であればHPLCという機器で十分でしたが、今後はLC-MS/MSというより高価で高精度の機器を使用する必要があるため分析費用があがります。また、製造した原料が検査で基準値を超えた場合、Δ9-THCを分離して再度分析にかけるなど、分析回数が増えることも想定されます。

これらが理由でCBDの原料価格は一時的に高騰すると予想されます。ただし、新規制に対応する原料の供給量が増えていくと、また徐々に値下がりしていくとは思いますが、新制度の施行前の価格を維持するのは難しいと見ています。

 

②成分分析が厳格化される

商品を販売する際に、使用した原料は勿論、最終製品の成分分析書の提出が必要になる機会が増える可能性が高いと見ています。

特にAmazonや楽天などの大手ECモールや、ドンキホーテなどの大手小売店などコンプライアンスがしっかりした販路で商品を販売する場合です。

また現在、厚労省が海外の指定検査機関をリストにしています。これは食品分析全般に関するリストですが、カンナビノイドの分析機関に特化したものを今後を共有すること示しています。そのため、リストに記載のある検査機関での検査が必須になる可能性もあるかもしれません。

LC-MS/MSでの分析には10万円前後かかる場合が多いので、その費用も製品を販売する事業者の負担になってくるかと思います。

 

③リスク回避のために低濃度の商品が増える

カンナビノイド分析において厚労省が示す精度での正確な検査体制がまだ確立されていない状況です。

分析機関のKCA LabはGreen Zone Japanの記事で以下の報告をしています。

  • ・同じ製品やバッチでも、カンナビノイドの均一性、劣化、化学変化によって検査結果にばらつきが生じることがある(±20%程度の誤差:仮に10ppmのΔ9-THCを含有するサンプルを複数回検査した際に8〜12ppmの間で検出される)

  • ラボによる検査方法の違いで、同一製品・同一バッチに対して、 他のラボではΔ9-THCが検出されなかったが、KCAでは検出された事例があった

  • CBD原料の自然変性によるΔ9-THC合成の可能性がある。初回検査では規定値以下だったが、再検査時には規定値を超過したことがあった

 

検査結果のばらつき、ラボによる結果の違い、変性などを考慮すると高濃度で商品化し、基準値を超えてしまうリスクを回避するため、低濃度の商品が増えると見ています。

特にオイルやベイプなどは、液体油脂(アの10ppm)に分類される形で10%以下の濃度で商品化する例が増えていく予想です。

④新制度での商品の流通開始 (年末年始を目処)

厚労省が新制度の施行に伴い輸入手続きを変更します。上部に旧制度、下部に新制度での手続き方法が記載されています。

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これまでは1)成分分析書、2)茎種から取れたことを証明する書類、3)製造工程の3点が必要で、商品を輸入する際に、麻取の事前確認を得ることが必須でした。

これからは事前確認に必要な書類は成分分析書のみになるようです。またこの手続きが必須ではないことを示しています。

麻薬取締部では、『CBD 関連製品の輸入を検討中であり、その製品が麻薬であるか否かの判断がつきかねる方等』を対象にして、通関前に確認(麻薬非該当性確認)を行います。この事前確認手続きは、当該製品の輸 入に際して必ず必要な法定事項ではありません。出典:厚労省

 

新基準適用に伴う厚労省による事前確認手続きは、11月12日から受付を開始するようです。

確認に1-2ヶ月かかるため、新制度で本格的に商品が流通するのは年末年始くらいになると見ています。

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