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カンナビノイド分析技術の種類とその原理(GCとHPLC)

 

今回はCBDやTHCなどのカンナビノイドを検出するための分析方法とその原理について解説します。

CoAの読み方が分かり、CoAの取得経験のある方がより深くCoAについて理解していただくための記事です。

なお、CoAの基本的な見方に関してや、分析機関の選び方については以下の記事をご覧ください。

https://shop.tokyo-mooon.com/blogs/blog/certificate-of-analysis
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このレベルまで理解することで、最終製品を使用するユーザーやカンナビノイド原料の販売相手からの信頼を獲得することが出来ます。

 

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1. カンナビノイドの検出に使用する主な分析方法

植物から抽出されるオイル中の成分組成を確認する方法は、以下のいずれかの分析機器による方法が有名です。

  • GC-FID(ガスクロマトグラフィー: FID検出器)
  • HPLC(高速液体クロマトグラフィー)

GC-FIDのGC(Gas Chromatography)はガスクロマトグラフィー、HPLCのLC(Liquid Chromatography)は液体クロマトグラフィーを表します。クロマトグラフィーは、物質を分離したり生成する技術を意味します。気体を用いるのか、液体を用いるのかの違いで呼び方が変わります。なお、FIDとは検出器の種類を示しています。

写真引用:What are the Differences between GC and HPLC ? (lab-training.com))

主に石油産業でGC-FIDが、製薬産業でHPLCが普及したと言われています。石油類は軽い有機化合物で、常温だと、気体か液体で存在します。一方で、薬の多くは固体で、製薬のプロセスで扱う中間体(薬の合成の途中段階のもの)は液体か固体がほとんどです。

物質の形態に応じて、分析手法を変える必要があり、気体になりやすい軽い化合物の測定にはGCが、気体になりにくい重い化合物の測定にはHPLCが利用されてきました。

カンナビノイドのような、あまり軽くもなく重くもない化合物は、どちらの分析方法も利用することができます。

GC-FIDとHPLC、それぞれの長所と短所

原理の説明の前に、各分析方法の主な利点と欠点を以下にまとめました。

GCでは測定したい試料(テストする対象物のこと)を分析する際に、試料を加熱して気化します。200~300℃程度まで加熱することが多く、熱に弱い不安定な成分は分析中に壊れてしまうため観測できません。そのため、試料が沸点の低い揮発性成分に限られます。

感度(検出下限・定量下限に対する感度)に関してはHPLCよりも成分の検出下限(検出限界)や定量下限が優れています。つまり、微量しか含まれていない成分についても検出や定量が可能です。

GCは試料が限られるものの、感度が高く、測定がスピーディーなため、非常に汎用性が高い分析方法と言えるでしょう。

一方、HPLC測定は、試料を加熱しないので、分子(=化合物)が測定中に壊れにくい特徴を持っています。

化合物の8割以上は十分な揮発性(液体の蒸発のしやすさ)がない、あるいは加熱に対し不安定と言われています。HPLCは、そのような高分子量の化合物(分子量が多いため蒸発しづらい)や不安定な化合物でも分析可能な利点を持っています。

 

カンナビノイドの検出にはGCかHPLCのどちらが良いのか

結論から言うと、GCとHPLCの両方の分析データがあるべきです。理由はどちらにも一長一短があるからです。ただし、用途によっては片方だけでも問題はないかもしれません。

CBDべイプ専用のCBDリキッドのように、加熱して吸入する用途でつくられるCBDオイルであれば、GCで分析するほうが良いでしょう。前述の通り、GCは試料を加熱および気化して分析にかけるからです。

一方で、加熱して吸引するのが目的ではないオイルなどの場合はHPLCの分析データがないと正確な成分はわからないでしょう。

なお、もう一つ重要なこととして、テルペンは揮発性の化合物なのでGC-FIDによる分析の方が適しています。そのため、これらは状況に応じて使い分けるのが正解です。

 

カンナビノイドの検出にHPLCを使う理由

前の章では、GCとHPLCは臨機応変に使い分けるとお伝えしましたが、ここでは、カンナビノイドの検出にHPLCを使う理由を解説します。具体的な利点は以下の2つです。

・加熱により変形してしまうカンナビノイドがある

・カンナビノイドは加熱で十分に気化しない可能性がある

一つ目に関しては、例えばCBDAを加熱すると簡単に脱炭酸してCBDになります。

 


そのため、GC-FIDだと、CBDAやTHCA、CBGAなどのカンナビノイドの正確な含有量が確認できません。

二つ目の理由に関しては、純粋なカンナビノイドの沸点は比較的高いことに要因があります。つまり、あるカンナビノイドが検出されたとしても、全ての量が十分に気化されているとは限らないため、正確な量を観測できていない可能性があります。

ただし、GC-FIDでTHCやCBDなどのカンナビノイドが検出されることは分かっています。これは、共沸(同時に蒸発し、一緒になった蒸気ができること)のような現象があるため、微量であれば沸点を越える加熱温度でなくても気化するからです。

とはいえ、カンナビノイドの含有成分を正確に見たいのであればHPLCのデータが必要でしょう。 

 

2. クロマトグラフィーの原理と分析(GCおよびHPLC)

原理については素人でも理解できるように、厳格性は排除して説明します。

下図はクロマトグラフィーによる成分分離の原理についての概略図です。


クロマトグラフィーとは図のような固定相と移動相を利用した成分の分離方法です。

固定相は、「カラム」と呼ぶ「配管のような構造」の内側に充填されている素材で、混合物中の成分に吸着することで成分をカラム内にとどめる働きがあります。すなわち、上図の筒状の「カラム」とは、固定相が充填されている、分離装置として機能する配管のような部分のことです。

一方で移動相は成分を運ぶためのガスや液体であり、圧力をかけてカラム内に流します。

成分(=化合物)にはそれぞれ特有の構造・性質があります。このような「個性」によって、それぞれの成分は、「固定相への吸着力」や「移動相による運ばれやすさ」が異なります。

固定相に吸着されやすい(とどまりやすい)物質はカラムの出口に到達するのが遅くなりますし、固定相に吸着されにくく、移動相に運ばれやすい物質はカラムの出口に到達するのが早いでしょう。

このように物質(=成分)の性質ごとにカラムの出口に到達する時間が異なってくるため、成分を分離することができます。GCやHPLCでは、カラムの出口に検出器があり、出口に到達するまでにかかる時間で、その成分が何の物質なのかを判断しています。

なお、「移動相に運ばれやすい」について、一般的にGCでは成分の沸点が低いほど(揮発性が高いほど)、HPLCでは移動相に成分が溶けやすいほど、「運ばれやすい」成分になります。

 

3. 大麻由来カンナビノイド製品のHPLC分析の例

ここからは具体的に、カンナビノイドを含むべイプ製品の含有成分を調査した研究論文を引用して説明していきます。

まず、下図の分析結果をご覧ください。

出典:Analysis of Cannabinoid-Containing Fluids in Illicit Vaping Cartridges Recovered from Pulmonary Injury Patients: Identification of Vitamin E Acetate as a Major Diluent|MDPI 

これがHPLCによる分析結果の例です。Cのチャートから、11種類の天然のカンナビノイドが明確に観測されることが分かります。

なお、図中のCは、た検出が予想されるカンナビス成分を混合したサンプル試料(標準物質)をあらかじめ測定したものです。Cの図を参考にAやBのチャートを見ます。

AとBの図は、実際のべイプリキッド製品の含有カンナビノイドを測定した結果の例です。AではTHCが最も多く含まれていることが分かります。

BではΔ8THCの方がΔ9THCよりも多く含まれていることが分かります。なお、一般的にTHCと呼んでいるものはΔ9THCのほうです。Δ8THCはΔ9THCと構造が似ていますが、微妙に違いがあるため区別されています。

※実際は、化合物によって検出感度が大きく異なることがあるため、1つのチャートだけで、成分量の比率を見積もることはできません。しかし、カンナビノイド同士の比較であれば、お互いの化合物の性質・構造が似ているため、ある程度は山(ピーク)の大きさで含有量の違いを判断できます。なお、「1つのチャートのみ」で、迅速に成分の割合を見積もることができないだけで、測定データから正確な含有量を計算することは可能です。ここでは詳細な説明は割愛させていただきます。

このHPLCで特に注目するべき部分は、THCAやCBDA、CBGAなども検出できることです。GCでは加熱によってこれらの化合物が脱炭酸されてしまうので、観測できません。

また、それだけではなく、サンプル中のカンナビノイドの含有量を、より正確に計算することができるポテンシャルがあるのもHPLCの強みです。

 

4. まとめ

カンナビノイドの検出・分析にはGC-FIDとHPLCをうまく使い分けることが大切になるでしょう。特に、GC-FIDとHPLCの両方のデータをこまめに測定しているメーカーや研究機関は信頼できると言えます。

GC-FIDは汎用性が高く、あらゆる場面で利用できるため、分析に必須の機器と言えます。また、テルペンは揮発性の化合物なのでGC-FIDによる分析の方が適しています。

しかし、カンナビノイドの含有成分を正確に見たいのであればHPLCの測定データは必須です。したがって、GC-FIDのデータは当然あるものとして、それに付随してHPLCが測定されているかを確認するのがおすすめです。ただし、目的によってはHPLCの分析のみでも問題ないでしょう。

繰り返しにはなりますが、弊社で実施しているカンナビノイドの検査・分析サービスをご利用されたい方は、以下よりお問い合わせください。また、サービス概要は以下よりご確認いただけます。

 

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CoAの基本的な読み方について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
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