CBD事業者が、製品や原料を購入する際に、必ずと言っていいほど目にするのが「CoA」。CoAは、Certificate of Analysisの略で、日本語で「分析証明書」を意味します。
CBDビジネスを行うにあたり、なぜCoAがそこまで重要なのでしょうか。今回は、CoAを取得すべき理由や、どんなことが明記されてあるのか、取得方法などを、詳しく解説していきます!
1. CoA(分析証明書)ってなに?
CoAには、含有成分がなにであるか、成分の含有量はどれくらいか、人体に害のある成分が含有されていないか、などの情報が明記されています。製品にも原料に対しても、発行が可能です。

(Organic CBD HoneyのCoA)
実際に成分の分析を行うのは、CBD原料の抽出工場ではなく、第三者分析機関である「サードパーティ」です。第三者が検査することで、信頼性の高さを担保することができます。
CBDの場合、分析証明書にはだいたい以下の内容が記載されています。
- カンナビノイドの成分構成
- テルペンの成分構成
- 微生物
- 農薬
- 残留溶剤
- 重金属
海外からCBD製品・原料を輸入する場合は、THCが含まれていないことを確認し、合法的に商品を取り扱うために発行されることが多いです。
そのため、含有成分の詳細や含有量が示されたCoAを取得することは、CBD製品販売時のブランディングにもつながります。製品外箱のQRコードや、企業のECサイトの製品画像ページで消費者がCoAを確認できるよう、一般公開している企業もあります。
2. CoA(分析証明書)が要求されるようになった背景
2017年に、The Journal of the American Medical Association (JAMA)が行った調査では、テストしたCBD製品のうち、26%が広告で謳っているCBD含有量を下回っているという結果がでました。さらに、21%のCBD製品には、検出可能なレベルの量である、THCが含まれていたのです。
この調査結果が報告されたあと、いくつかのCBD製品のメーカーは、商品に対する消費者の信頼性を高めるために、CoA(分析証明書)を取得するようになりました。製造の過程でCBDが失われてしまうこともあるため、最終製品をテストしてから、CBD製品に対して、CoAを取得するメーカーもあります。
参考
出典:Labeling Accuracy of Cannabidiol Extracts Sold Online | Addiction Medicine | JAMA | JAMA Network
3. CoA(分析証明書)の基本的な見方
(CBDアイソレート原料のCoA)
CoAは、だいたい以下の三つのパートに分かれてます。
①検査に関する基礎情報
②検査結果
③分析担当者の名前及び署名
①と②になにが明記されているか、それぞれ説明していきます。
①検査に関する基礎情報
基礎情報には、以下が記載されていることが多いです。
- 製品名
- 製品番号
- バッチナンバー
- CASナンバー(化学物質に固有の数値識別番号)
- 検査日
バッチナンバーとは、同一製品を識別および追跡するための番号のこと。検査日は、数年前に検査されて時間が経っているより、製品の販売や原料の仕入れ日まで間をあけない方がいいでしょう。
②検査結果
(CBDアイソレート原料のCoA)
検査結果には、カンナビノイドの成分構成が明記されています。カンナビノイドは、世の中に100種類以上存在していますが、CoAでは主に、以下のものが表示されることが多いです。
- CBD(カンナビジオール)
- THC(テトラヒドロカンナビノール)
- CBN(カンナビノール)
- CBG(カンナビゲロール)
- CBC(カンナビクロメン)
こちらは、CBDアイソレート原料(CBD単体成分のみ)のCoAなので、CBDとCBDV以外の成分は検出されず、「LOD」と書かれています。LODは、Limit of Detectionの略で、検出限界値を意味します。THCなどの違法成分は、すべて非検出である必要があるため、「LOD」と表示されていなければなりません。
4. その他、テルペンの成分構成や人体に害のある成分の明記も
CoAは、THCの検出や、単にその製品や原料に含まれているCBDの証明をするためのものだけではありません。
テルペン(香料)の成分構成や、農薬、微生物など、人体に害のあるものが含まれていないかも確認することができます。
テルペン(香料)の成分構成
(テルペンのCoA)
テルペンとは、大麻草に含まれる、独特の香りを与える成分のことです。上記の通り、原料にはいくつかの種類のテルペンが含まれていますが、品種によって含有成分やその割合が異なります。
アイソレートの場合は無味無臭ですが、ブロードスペクトラムは、抽出方法や抽出した麻の種類によっても、香りが大きく異なります。
好きな香りを組み合わせられるように、テルペンを単独で販売する事業者もいます。テルペンについては、以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
【原料販売中】CBDの効果を増大するテルペンとは?【薬剤師監修👩🏻🔬】
農薬|”Passed” 表記ならOK
(CBDアイソレート原料のCoA)
上記の枠部分が農薬について触れています。(Pestizidは、英語で「殺虫剤」を意味する Pesticide のことです)
こちらは、”Passed”と明記されているので、人体に有害なほどの農薬は含まれていない、安全な状態であることがわかります。クリアできなかった場合は、どれくらい含まれているか、mg単位で表記されます。
殺虫剤の中には、有機リン系の農薬であるアセフェートや、ネオニコチノイド系殺虫剤の一種であるアセタミプリド、マクロライド系の殺虫剤であるアバメクチン等があり、約50もの殺虫剤の検査をする研究所もあります。
上にあるCoAのように、殺虫剤をひとくくりにして記述している研究所もあれば、殺虫剤一つひとつを丁寧に記載している研究所もあります。単に表記方法が異なるだけで、後者のほうが安全と言えるものでもありません。
微生物|“ND” や “Pass”の表記ならOK
製品や原料に、人体に害を及ぼすほどの微生物が存在しているのかも、確認することができます。Negativeや、ND(検出されなかった)、Pass(試験通過)という表示が出ていればクリアしていると判断できます。
こちらのCoAを参考に、微生物の項目を見ていきましょう。微生物の項目は「Complete Micro」の部分です。Complete Microには、以下が明記されていることが多いです。
- Total Plate Count(合計生菌数)
- Escherichia coli(大腸菌)
- Salmonella(サルモネラ菌)
- Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)
- Yeast & Mold(酵母及びカビ)
大腸菌のほとんどは無害ですが、強い病原性をもつものもあり、食中毒につながる可能性があります。
サルモネラ菌は、人をはじめ、牛や豚やにわとりなどの家畜の腸内、河川・下水など自然界に広く生息していている細菌です。乾燥に強く、少量の菌でも食中毒を発症するため、非常に危険な細菌として知られています。
黄色ブドウ球菌は、一般的なブドウ球菌の中でも最も危険な微生物として知られており、膿瘍や中毒性表皮壊死融解症を引き起こす恐れがあります。
酵母及びカビは、例えば「エクソフィアラ」などの黒色真菌などが当てはまりますが、皮膚の膿瘍や潰瘍を引き起こすだけでなく、肝臓や脳の膿瘍を形成するとされており、脳を侵されて死に至る例もあると言われる危険な菌を含む場合もあります。
参考
残留溶媒|RESULT(結果)が “Passed”ならOK
(CBDアイソレート原料のCoA)
残留溶媒は、原料の抽出の際に使用した有機溶媒が、どれだけ残留しているかを示すものです。
残留溶剤試験では、残留溶媒またはその他の不純物が有害な量で存在するかどうかを確認します。製品開発中にCoAを発行することで、適切に溶剤が取り除かれているかどうかを判断することもできます。
残留溶媒は赤枠部分で、RESULT(結果)が “passed” となっているため、きちんと溶媒が取り除かれている状態であることがわかります。
重金属|“ND” が表示されていたらOK
(CBDアイソレート原料のCoA)
重金属とは、人体にとって倦怠感や疲労感、知覚異常などを及ぼす可能性のある、有害物質です。汚染された土壌で育てられた大麻から抽出したCBDである場合、重金属が検出される可能性が高いと言われています。
鉛、メチル、水銀、ヒ素などは重金属の中でも危険な成分ですので、ND(Non Detected:非検出)表示があることを確認しておきましょう。
特に、以下4つの重金属は体への影響が大きいため、研究施設では必ずチェックされています。
- Arsenic(ヒ素)
- Cadmium(カドミウム)
- Lead(鉛)
- Mercury(水銀)
ヒ素を吸入すると、肺がん、皮膚がんなど、経口曝露では膀胱がん、肺がん、皮膚がんなど、多臓器にがんが発症すると言われており、非常に危険な重金属であるといえます。
カドミウムを摂取すると、数時間後には、咳、口渇、鼻や喉の痛み、頭痛、目眩、衰弱、発熱、悪寒、胸部痛などの炎症がみられるようになります。カドミウムに汚染された粉塵を吸い込むと、短期間で気道や腎臓に問題を引き起こし、多くは腎不全になります。
鉛は、摂取し中毒になった場合、軽度の症状だと疲労感や睡眠不足、便秘を引き起こし、重度の場合は脳の損傷を与えます。
水銀は、中枢神経や内分泌器、腎臓などの器官に障害をもたらし、口腔・歯茎・歯にも損傷を与えます。 低濃度であっても、長時間水銀の蒸気にさらされると、脳に障害が生じます。
参考
出典:
環境省
学研キッズネット
日本鉱業協会 鉛亜鉛需要開発センター
札幌臨床検査センター
5. 輸入の際に、CoAで抑えておくべきポイント
製品・原料を輸入したいので、CoAを取得したい!と思ったら、まずは、製品の場合はメーカー、原料の場合は、原料メーカーに連絡をしましょう。
取得後、主に抑えておくべきポイントは以下です。
- 輸入するCBD製品を特定できる番号(製品ロット・バッチナンバーなど)
- 分析日または分析レポート作成日
- 分析方法とLOD(Limit of Detection)について(※政府はLOQを認めていない)
- 分析機関の責任者または分析者の役職と署名
- THCとCBDの分析結果(THC・THCA・THCV・THCVA・ΔTHCは国内の基準では「ND」である必要)
分析日や分析レポートの作成日がずいぶん前のものである場合は、最新のものを取得するようにしましょう。
輸入は厚生労働省の許可を得るのに、2022年現在、約1.5ヶ月ほどかかります。そこから配送、食品輸入届けの提出や通関手続きなどを考えると、最低でも3ヶ月ほどは正規輸入をするのに時間がかかると見た方が良いです。
正式なCoAが無い場合、輸入に失敗し、税関や検疫所で商品が破棄される場合も多いので、専門的な知見を持った人に相談しながら進める必要があります。厚生労働省の資料にも詳しく記載があるので、チェックしておくことをおすすめします。
6. ケース -NG製品事例-
2020年に、一般社団法人日本化粧品検定協会が行った検査では、日本で流通していたいくつかの商品に、下記の可能性が言及されました。
- 大麻取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反の可能性
→サードパーティ機関ではなく、販売会社自身で作成したと思われる分析表では、THCの検出量「ND」表記であったが、検査をして見るとTHCが検出
- 景品表示法(優良誤認表示)違反に該当し行政処分の可能性
→CBD含有製品にも関わらず、「CBD含有量0%」と表記
- 不正競争防止法違反による処罰の可能性
→CBD含有量誤表記
- 食品表示法違反の可能性
→全ての添加物の物質名が表記されていない (食品に添加物を使用した場合や使用する原材料に添加物が含まれている場合は、原則として、すべての添加物の物質名を表示しないといけません)
事件調査結果一覧 | CBD製品の審査|カンナビノイド審査委員会 (japan-ca.jp)
CBD事業者としては、これらに該当しないよう、最新の注意を払って商品を製造・販売する必要があります。
7. 最後に|弊社にてCoAの作成も可能
今回は、CoA(分析証明書)について解説をしてきました。弊社は、提携している海外の3rd Party Labでの検査も承っています。
このサービスは、日本よりもはるかにCBDのマーケットが成熟しているアメリカ・ヨーロッパにて長年において、CBD事業者から支持されてきた海外の検査機関と提携し、提供させていただいております。
新たにCBD製品の卸売・OEM製造・その他、新規で事業を始めようとされている方向けのサポートも行っておりますので、下記のフォームよりお問い合わせ頂ければ幸いです。
カンナビノイド原料(CBD・CBG・CBNなど)やテルペン、CBD商品の仕入れにご興味のある方はこちらもご覧ください。
また、原料の適正な卸売価格について知りたい方はこちらもご覧ください!